【思ってもみなかったことになる、いつも】
先行き不安な戦後に、希望を与え続けた花森安治。どんな人なんだろう、と展覧会中の「神戸ゆかりの美術館」へ。
『暮らしの手帖』に掲載された、著名人の随筆が展示されていた。そのうちのひとつ、棟方志功『哀母記』を読んでいて涙がつたった。志功の母は42歳で13人の子供を産んで亡くなった。志功の父の作った鎌を、雪の中行商し、その帰りを心配して兄弟で待っていた。父親はきつかったらしく、一言も文句をいわず、貧乏の中、子供を守りながら生きた。だから、志功の仏さまは、母への思いから来てるんだとわかる。淡々と、事実を方言まじりに述べる、修飾語のない文章がこんなに強いとは。
行動様式は変わったけれど、人間の本質は変わらない。両親を見る目で相手を見、自分のジャッジで本質を見えなくしている。そして気付く。親と同じ事をしていることに。
幸せとは、自分が愛に囲まれて生きてきたことに、やっと気付くこと。