制約が多くなるほど、隠れた遊びをしたくなる。
(「仏像の姿」三井記念美術館・前編)
2018年10月20日(土)
親愛なる君に
「仏像は、どれを見ても同じに見えます」
と、相談されました。
似ているものほど、違うのです。
小さな違いが分かることが、面白くなるということです。
特別展「仏像の姿(かたち)~微笑(ほほ)む・飾る・踊る~」
(三井記念美術館)が、炸裂してました。
仏師の姿に、広告代理店のクリエイターを重ねました。
信仰の対象なので、
「してはいけないこと」と「しなければならないこと」という制約が
びっしりあります。
制約が増えれば増えるほど、
職人の中に、隠し味を入れたいという情念が燃えてきます。
「芸術ではないが、事務でもない」
というのが、僕たち広告代理店のクリエイターの心意気でした。
ディテールで遊ぶとするならば、
表情・衣装・動きに一工夫を加えることです。
最初は、ぎりぎりいっぱい怒られない範囲で、
微妙な表情を加えて、次は、ひだをちょっと揺らせてみて、
ちょっと右足を出してみて、と変化させていく。
それがまさに特別展のサブタイトル「微笑む・飾る・踊る」です。
前髪をちょっと下ろしてみたりする《称名寺・不動明王》に、
校則の厳しい学校の女子高生は共感するでしょう。
剃髪の仏師は、髪形にこだわったんですね。
《康円・四天王眷属立像》の靴が、右足は前が破れ、左足はかかとが
破れているところに、サッカー部なら、気づいてくれるでしょう。
彰宏より
P.S.
気づく人だけ、気づいてくれるといい。
職人と目利きのキャッチボールを楽しませてもらえる
清水眞澄館長、渾身の企画です。
この時代に生まれていたら、仏師になっていたかもしれません。